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客人(後編)@セバスチャン

一台の馬車が屋敷の前に着いた。

クラウス:「やれやれ、本国は遠いな。まったく」
クラウス:「ここにくるのも久しぶりだな」
シエル:「来たか、クラウス」
クラウス:「ポナセーラ、シエル!元気にしてたか?少し背が伸びたかな?」
シエル:「残念だが、変わっていない」
クラウス:「それは失礼!相変わらずで何よりだ」
シエル:「貴殿も相変わらずだな」

シエルのぶっきらぼうな態度とは対照的にクラウスは陽気である。

セバスチャン:「いらっしゃいませ、クラウス様」

セバスチャン以下4人が玄関で出迎えた。

セバスチャン:「主人と積もる話もおありでしょう。すぐに晩餐の用意をいたしますので、どうぞ中庭へ」
クラウス:「中庭?」

クラウスが虚を突かれ、聞き返す。

セバスチャン:「この度のご苦労に見合うもてなしを主人からもうしつかっております。
          お気に召していただければ幸いです」

と言うと中庭への扉を開いた。
するとそこには、

クラウス:「おお・・・!」
セバスチャン:「日本に伝わる石庭(ストーンガーデン)と申します」

立派な枯山水が築かれてた。

セバスチャン:「お茶のご用意ができております。どうぞ、あちらへ」

石庭のすぐ側にテーブルとイスが用意されている。

クラウス:「あやめ(ジャッジーロ)が実に美しいな。枯れ木と花・・・"ワビサビ"というやつか」

クラウスが見とれていると、側にセバスチャンが立ち

セバスチャン:「失礼します」

と、お茶を淹れる。

クラウス:「お茶まで日本(ジャッポネーゼ)風か。凝り性だな、君も」
セバスチャン:「勿体無いお言葉恐縮です」
クラウス:「こりゃ夕食も期待できそうだ。はははは・・・」

そう、それは田中が愛用してる急須と湯のみを使っていたのだ。
シエルはニヤニヤしながらその様子を眺めていた。

シエル:「ところで、クラエス。例の品だが・・・」
クラエス:「あぁ、約束通り持って来た」

                   ・・・
クラウス:「君が欲しがっていたゲームだ」

クラウスがゲームをシエルに差し出す。

クラウス:「イタリアでは未発表でね。手に入れるのに苦労したよ」
シエル:「ふん。苦労ね・・。朝(でんわ)からやたらと強調するな」
クラウス:「そりゃ、そうさ。王子様は従者に苦労に見合う「ご褒美」をくれるものだろう?」
シエル:「「ご褒美」に見合うゲームならいいがな。
       この間クリアしたのは、さして面白くもないエンディングだった」
クラウス:「やれやれ、子供(キミ)の手にかかれば、ゲームなどひとたまりもないな。
       どうせまたすぐに次をよこせと言うんだろう?」
シエル:「そう、子供(ボク)は享楽(ゲーム)に貪欲だ」
クラウス:「そんな君だからこそ、その若さにしてファントム社を
       この国一の玩具メーカーに成長させたんだろうがね。
       まったく末恐ろしいよ」

セバスチャン:「お話中失礼致します」

セバスチャン:「晩餐の準備が整いましたので、お持ち致しました。
          本日のメニューは当家の料理長(シェフ)バルドロイによる
          牛たたき丼でございます」

実際はバルドは切って載せただけで、その他全てセバスチャンが作ったのだが・・・。

クラウス:「D・O・N・???」

またも意表をつかれるクラウス。

クラウス:「これが晩餐・・・かね?てっきり京懐石か何かと・・・」
セバスチャン:「クラウス様、ご存知でしたか…?」クラウス:「え?え?」

セバスチャンが目をキラキラさせながら答える。


セバスチャン:「丼(どんぶり)とは
古来日本から労働者をねぎらうご馳走として
用いられてきたものです。
一仕事終えた功労者に
感謝とねぎらいの意を込めて
ふるまわれた料理・・それが丼という食べ物なのです!!」



セバスチャン:「かつては庶民が憧れた宮廷料理「芳飯(ほうはん)」というものが
          丼の元祖と言われております。
          それに・・・凝りに凝った料理にクラウス様の舌は飽いていらっしゃるかと思いまして
          最高級の肉をシンプルに味わって頂くために、このような趣向をこらしてみました」

セバスチャンのナイスフォローが追い討ちをかける。
クラウスは説明に聞き入っていたが、はっと気付き

クラウス:「はっはっは、シエル!!最高だよ。君はいつでも私を驚かせてくれる!
この業界にはユーモアに欠ける連中が多くてね。だが君とならこれからも楽しくやれそうだ」
シエル:「それは光栄だな」

これまでの経緯を影から覗き 見ていた使用人達も事の大成功に大喜びをしている。

クラウス:「日本の丼がそんなに奥深い料理だったとはな。君は実に知識人だ」
セバスチャン:「恐れ入ります」

こうして会談は大成功に終わる。
セバスチャンが裏に下がると

フィニ:「すごいっ。すごいです。セバスチャンさんっ」
バルド:「おうおうヒーローのご帰還だ!
      オレの国じゃあお前みてーな奴のこと、スーパーマンって言うんだぜ」
セバスチャン:「・・・"スーパーマン"などではありませんよ・・・私は。
          あくまで執事ですから

テーマ : 大航海時代Online - ジャンル : オンラインゲーム

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